老人ホームに入居する前に確認しておきたい相続と空き家の話

みつおパパ
父親が亡くなってしばらく経つけど、今思うと老人ホームを探すのには苦労したね。今も変わらず老人ホームに入れない「待機者」って呼ばれるお年寄りが52万人もいるみたいだし、今後もこの流れは止まらないだろうね。
ななみママ
そうね、でも老人ホームに入る前に確認できることはなかったのかしら。結果論だけど、マンションの相続登記にはとてもお金がかかったし、私たち以外の相続人を探すのに苦労したでしょ。「生前贈与」っていうのを受けていたらもっとスムーズに行ったんじゃないのかしら。
岩谷せんせい
安心・楽、という視点で言えば生前贈与を受け、名義変更してしまったほうがいいですね。しかし、贈与税と相続税の損益分岐点はケースバイケースなので、よく確認しておいたほうがいいでしょう。

老人ホームに入ったら自宅に戻ることはない

roujin

すごく現実的な話になりますが、ご両親が老人ホームに入居されたら、そのお住いに戻ることはほぼ無いと覚悟しておいて下さい。

今日本は「空き家」が社会問題になっており、老人ホームに入居されているお年寄りの「準空き家・空室予備軍」もまた問題になっているんです。日本の総住戸数に対して13%が空き家という現実で、こうした準空き家を数に入れると、実に4件に1件は空き家という問題が起こっています。

ですから、仮にマンションから老人ホームへ入居される場合には、早めに名義変更の手続きや、ライフライン各種の手続きを迅速に止められるよう段取りを組んでおく必要があります。

老人ホームへの入居が決まったらすぐにやること

老人ホームへの入居が決まったらまず、水道・電気・ガスといったライフラインの停止手続きを行いましょう。インターネットやオプションで契約しているものもすぐに止めます。

ほとんどの方がかすかな希望を求めて管理費・修繕積立金についてそのまま放置される方が多いと思います。しかし、そこに住まう人がいない限り、まるまるその金額が無駄になってしまいますし、安いものではありません。かといって勝手に止められるものではないので、生前贈与としての名義変更を行うのがベストな決断なのです。

しかし相続対象者が何人もおられる方はトラブルの元となるので、よく話し合ってからにしてください。

マンションの生前贈与
生前贈与を受けマンションを自分の名義に変更すれば、すぐに売却手続きを取ったり、買取や賃貸に出したり資産活用することができます。ここに罪悪感を感じる方が多いのですが、生前贈与の手続きは、ご両親が亡くなった後に行う相続登記の手続きとほとんど同じなので、先にやるか・後にやるかという問題だけなのです。精神論と薄っぺらい美徳だけで現実を見ずに、資産を凍結させておくことの方が私は愚かな考えだと思います。

生前贈与を受ける場合の手続き

kenrisho

生前贈与を受ける場合は、贈与を行う方と贈与を受ける方で準備するものがあります。

贈与を行う方が準備するもの

・登記済権利証(または登記識別情報)
・印鑑(実印)
・印鑑証明書(発行後三ヶ月以内)
・対象不動産の固定資産評価額が分かるもの(固定資産税の課税明細書または固定資産評価証明書)
・身分を証明するもの(運転免許証等)

贈与を受ける方が準備するもの

・住民票
・印鑑(認印可)
・身分を証明するもの(運転免許証等)

言い換えればこうしたものが準備できる段階の状態でないと、贈与は難しいということです。すでに痴呆が進み、権利証のありかなども分からない時は手続きがまたややこしくなります。なおこれは「生前贈与だから」ややこしいのではなく、相続後においても基本的に同様です。今用意できないものが、後になったら不要になるわけではありません。

贈与にかかる登記費用

贈与にかかる登記費用は贈与した物件・土地によって異なりますが、次のようになります。

・登録免許税(固定資産評価額×2%)
・登記事項証明書(@600円)
・発送にかかる郵便代
・司法書士に依頼する場合の報酬

相続登記にかかる登録免許税は固定資産評価額×0.4%なので、仮に1000万の評価額のマンションを扱う場合、贈与なら20万円、相続なら4万円と、大きく開きがあります。司法書士に支払いする報酬についても5~10万円程度、合計して30万円近い支払いを贈与の登記において負担することとなります。

これが相続に比べて高いか安いかで言えば、「高い」と思います。基本的に贈与というのは何も対策をしなければ高いものですし、贈与税もここに上乗せされるので目的がなければやるべきではありません。

しかし、現実的なことを言うと老人ホームに入っている期間が1年なのか、2年なのか、それとも5年なのか、その期間の管理費や修繕積立金のことを考えると、有に10万、20万というお金が飛んでいくのです。何も知らずに、結果として亡くなられた方の口座を見れば知る由もありませんが、老人ホームに入居している期間の管理費や修繕積立金が引き落とされていることは事実として存在するわけです。

この期間のお金を考えると、生前贈与に関する登記費用や贈与税というのは判断として「高い」とは言いにくいものなのです。