相続税対策にタワーマンション節税はもう通用しない

みつおパパ
タワーマンションを買えば1000万単位の節税効果があるって聞いたんですけど、それって本当ですか?
岩谷せんせい
ええ本当ですよ。ただ、近いうちにその対策は通用しなくなります。またあまりにもタワーマンションが建設されすぎていて、相当立地がいいマンションでないと節税対策として購入するマンションに値しないことがあります。節税対策として購入するマンションは「1億円以上で値下がりの心配がないマンション」に限定されますね。
みつおパパ
ということは、僕みたいな庶民が購入できるマンションだと、節税は期待できないってことですかね。
岩谷せんせい
言い切ることはできませんが、タワーマンション節税は「資産家」と言われる方たちに限定された節税方法ですので、私たち庶民が安易に手を出すとかなりの確率でむしろ「損」をします。2015年11月に国税庁がタワーマンション節税に対して言及しており、監視の対象にもなっています。また今のタワーマンション人気もある種「異常事態」ですから今後確実に値下がりが起こります。

タワーマンション節税って何?

タワーマンション節税が議論されているのは主に相続・贈与に関する事例においてです。

1億円を現ナマで贈与するより、1億円でタワーマンションを購入し「タワーマンション」として相続した方が、相続税を低く抑えられるという意味です。

相続税法が認識しているタワーマンションに対する評価額と、実際の不動産取引価格(実勢価格・市場価格)に差があるため、相続後にそのタワーマンションを売却して換金すれば、通常の現金相続よりも高い金額の現金を手にすることができるという仕組みです。

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ただ、あまりにこの節税方法が流行ってしまい、「節税」というより「税逃れ」の性質の方が強く税務署は今後対策を取る動きを見せているようです。

タワーマンションの相続税法上の評価額

なぜタワーマンションを購入すると節税効果があるのかというと、相続税法・固定資産税法上のタワーマンションに対する価値が低くなるからです。

マンションの相続税評価額については、土地部分は路線価を元に計算し、建物部分は固定資産評価額で計算しますが、一般には実勢価格よりも相続税評価額のほうが低くそれがタワーマンションであるとより顕著になるのです。

タワーマンションとは、普通のマンションの敷地に比べて狭い土地の上に、縦に伸びるように数百以上もの部屋が分け与えられています。そして相続税法上、物件の評価額を算定する上では、建物価格と土地の価格を足して、相続税率を乗じて計算します。

タワーマンションの場合は、狭い土地を区分所有者全員で按分するため、一人当たりの土地(敷地利用権)の評価額が異常に低くなるのです。従って、相続税法上は、横に広がる団地マンションや戸建てより、タワーマンションの方が課税評価額が低くなってしまう現象が起こるのです。

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また世間的なタワーマンションに対する評価はブランドや立地によって釣り上げられ、資産家たちが意地でも価格が下がらないよう圧力をかけているため、法律上導き出された価格と市場価格でギャップが起きるのです。市場価格の割高感と、相続税法による低すぎる評価によって「タワーマンション節税」が出来上がってしまいました。

固定資産税評価基準
土地は1㎡あたりの路線価に面積を掛け、実際に販売されている価格の7割~8割とされています。マンションは1つの土地を多くの人で分け合って所有しているので、最終的な評価額は「持分割合」で決定します。それに対して建物は毎年送付される固定資産税の課税明細書に評価額が記載されています。
相続税の基礎控除額
相続税には遺族の生活のために必要最低限の金額に対して相続税がかからないよう「基礎控除額」が設けられています。そのため遺産総額が基礎控除額を下回っていれば相続税が課税されることはありません。この基礎控除額の計算方法は3000万円+(600万円×法定相続人の数)とされていて、例えば法定相続人が2名の場合は3000万円+(600万円×2名)=4200万円となります。マンションの評価額がこの基礎控除の額に収まれれば、相続税を支払う必要はありません。

高層階であればあるほど節税効果がある

またこのタワーマンション節税のおもしろい所は、眺望・立地・方角・階数などが固定資産税評価額に影響しないということです。法律の上で「最上階が最も価値がある」「北向きの部屋は価値がない」などと定義することができないからです。

つまり、該当のタワーマンションであれば、どの階数・方角の部屋を購入したとしても、固定資産税評価額が変わりません。最下層北向き部屋の方と、最上階南向き部屋の方の不動産評価額は一緒なのです。

一般的に市場価格を左右する要因である「高層階」「眺望の良さ」「南向き」などのプラスポイントを加味して、少しでも高価で価値が高いタワーマンションを買った方が節税効果は高くなるのです。

賃貸マンションとして所有することでさらに節税効果を生み出せる

死期を見越してタワーマンションを買うというのは中々残酷です。しかし、ただ所有しておくのではなく、今ある現金をタワーマンションに代え、死ぬまでは家賃収入(賃貸収入)で生活すると考えると、非常に賢い節税方法だと思えます。

一般人は「生きている間」に購入したマンションの価格を賃貸収入で取り返せないと損をした気になりますが、資産家は、自分の死後を見越して相続によって売却した価格もひっくるめて「不動産投資」と捉えます。だから投資家は、タワーマンションしか不動産投資で狙わないのです。

さらに相続税法上「貸家」は通常のマンションより評価額が低くなる仕組みになっています。ただでさえ低い評価を受けているタワーマンションと土地(敷地利用権)に拍車をかけるように低い評価を与えるのです。また、個人ではなく法人として相続すると更に低く抑えることができます。

タワーマンション節税に一般人が参入してはいけない

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このようにタワーマンション節税は相続税対策においてとても魅力的に見えますが、安易な考えでタワーマンションを購入することはやめてください。

先にも解説しましたが、タワーマンション節税は2015年11月に国税庁が指摘をしています。「禁止」はしていませんが、タワーマンション節税の実態が「節税」ではなく「税逃れ」になっているというのです。

不動産を購入すれば必ず登記簿に名前が乗りますし、その登記簿情報は税務署とリンクしているため、すぐさま情報が飛びます。特に固定資産税は地方にとって大きな税収であるため、不動産登記情報は特に注意深く見ている項目です。また相続によって登記簿情報が変更されても、税務署にすぐ連絡が行くようになっています。

居住・利用の意思なくタワーマンションをただ噛ませる行為は、「タワーマンション」という金融機関にお金を預けて被相続人の死後、そこから引き出している行為と全く変わらず、正しい相続税を納める義務があるとみなされてしまうのです。

素人が「節税になるから」とタワーマンションを安易に購入すると、税務署にはその実態を簡単に見破られてしまいます。「タワーマンション節税なんだからいいんじゃないの?」と反論してしまうと終わりです。それを自白した時点で、節税のためではなく、税金を逃れるための「脱税」行為とみなされ、追徴課税で逆に多くの相続税を請求されることになります。

節税と脱税は紙一重です。必ず税理士に相談の上実行するようにしてください。

今後タワーマンションは必ず価値が下落する

タワーマンションの価値は今後必ず下落します。実際に今も、湾岸以外・地方のタワーマンションの価値が下落傾向にあります。

空き家が社会的な問題に発展し、最近の都知事選などでも候補者のほぼ全員が政策にあげるほどですが、それに逆らうように、にょきにょきとタワーマンションは建設されています。しかも即日完売。

ただ実態は、全国には757万戸もの空き家が存在し、完全なる供給過多の市場です。またその60%がマンションだというのですから驚きです。今は戸建てに対し特定空き家の指定をして各自治体がぼろ儲けしているそうですが、その矛先がマンションに向けられることは時間の問題です。

タワーマンションを相続税対策に購入し、空き家化して「特定空き家」に指定される可能性もゼロではありません。

また、タワーマンションはいわゆる今の「流行り」です。タワーマンションにはデメリットがあります。それがまだまだ社会的に認知されていないため、これが常識になってくれば間違いなくタワーマンションの今の異常なまでの割高は収まるとみえます。

今よりタワーマンションの価値が下がる・・・とは言いませんが、適正価格に市場が修正され「タワーマンション節税」ということも自然とできなくなっていくのだと思います。